KERA 命のパフォーマンス

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たしか今年の4月11日だったと思う。
池袋に用事があって、地下鉄の入り口まで歩いてきたときのことだ。
たくさんの人だかりがあって、その輪の中に、うつむいて白い仮面をかぶったダンサーがいた。
ジョージ・ウィンストンの曲が流れ始める。
私の好きな曲のひとつだった。
気になって見つめると、それまでじっと動かなかったダンサーが、
関節のはずれた操り人形のような動きを始める。
およそ人間ばなれした動き。
移動するのも、歩いているというより、じりじりと滑っているような感じだ。
動きが素早くなってからも、足捌きはブレイクダンスのような滑らかさで、
やはり歩いているとは到底思えなかった。
激しい動きが続く中に、「空間固定」を織り交ぜる。
壁がないのに、そこに壁があるかのような動きだ。
そこまでの一切を、ほとんどの場合仮面をつけて、無言でやり通す。
BGMにはほかに「戦場のメリークリスマス」も流れていた。
(写真がとれなかったので、ここhttp://plaza.rakuten.co.jp/sakurahayashi/diary/200802080000/からお借りしています。ありがとう。)

集まった人は100人くらいいただろうか。
ほとんどが動かなかった。その場に釘付けになってしまったのだ。
携帯で写真をとっている人もたくさんいた。
子供連れの母親もいれば、若い人も、私のようなスーツ姿もいた。
ただ、みんな、一瞬のうちにぴんと張り詰めた空気を感じて、その真剣さに打たれていた。

ダンスを終えて、仮面をとったダンサーは、隠す必要のないほどの美形だった。
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たぶん顔が目立ちすぎるから、あえて仮面をして、ダンスそのものを純粋に表現したいのだろう、と
そんなことをぼんやり考えていると、仮面をはずしたダンサーは
「みなさん、こんにちは。KERAといいます」と自己紹介を始めた。
このあともう5分の作品を演じるという説明があったあとで、彼は概略こんなことを言った。

「僕は、命をかけてやっています。だから、みなさんも、もう少し前に来て、
ここで僕がパフォーマンスをしても、通行する人に迷惑にならないようにしてください。
でないと、僕がまたここでパフォーマンスをお見せすることもできなくなってしまいます。お願いします。」

観客はその指示に黙々としたがった。
その後のパフォーマンスを、私を含めみんな、食い入るように見ていた。
終わった後、ダンサーのKERAさんは、すごく低姿勢に自己紹介のチラシを配って、一人ひとりに声をかけていた。

KERAさんのHPはここ。
http://www.kerapop.com/
(プロフィールの中にある動画を見るには、アンチウイルス等のセキュリティソフトをいったん無効にする必要があります。)

プロフィールによれば、
「0歳6ヶ月の時に川崎病と診断され、入退院を繰り返す幼少期を送る。
医学の発達のおかげで、中学生より本格的に身体を動かせるようになり、自転車で旅を続け、高校生で日本横断・縦断を経験。20歳でカナダ横断を達成する。
この旅でストリートダンスのジャンルのひとつである“POPPIN”に出会い、魅せられダンスを始める。
06年、ダンスグループ「幻影旅団」のNO.7に所属する傍ら、芸王グランプリ東京地区大会でソロ優勝。現在は路上パフォーマーとしてソロで首都圏、地方各地を回っている。
五体満足であることに感謝をし、独創的な「路上舞台」を演出している。」

渡されたチラシには川崎病のことを「重い心臓病」と表現していた。
この経歴だから「命をかけている」という言葉が出てくるのか、とそう思った。

POPPINを動画検索してみると、黒人を中心に流行っているブレイクダンスの一種(?)で、関節をはずしたガイコツダンスで笑いをとるようなところから始まっているらしい。
だから、KERAさんのパフォーマンスにアート(崇高さ、というべきか)を感じるとすれば、それはKERAさんの独創にかかる部分なのだろう。それは、命がけの真剣さと裏腹にある。

彼のHPで一番貴重なのは、BBSだった。
観客の感動した投稿に、KERAさんがいちいち返事を書いている。

BBSの中でKERAさんは言う。
「僕の性格や、考え方、に指針を与えてくれているきっかけが、2,3あるのですが、
その内ひとつが、病院での生活でした。
もう治る事も分からない病気を持っているのに、なんであんなに明るいんだろうって思う生活でした。
小学校から中学校までの時、8人部屋だったので、夜にはみんなでこっそりスーパーファミコンやってたり、自分達の持っている病気を言い合ったり。。看護婦さんをからかいに行ったり。
特殊な病気を持っている子供達。目の裏に癌があり、死というものを素直に(同じ子供同士だったからだと思いますが)受け止めている子や、笑いながらかつらを取る女の子や、脂肪を分解できず、太り続けてしまう子、、色んな子がいました。
みんな明るかったです。とにかく夜が楽しかった。
退院する時、今度はいつ戻ってくるのってみんなに言われました。
パフォーマンスをしていて、僕はチキンだから、逃げ出したくなる時があるんですが、フッと、自分が弱くなる時、一瞬よぎるんです。一生、ついて回るんだろうなw」

この記事へのコメント

夜桜2026
2008年09月26日 00:56
ご紹介ありがとうございました。

写真も綺麗に紹介してくださって、とても嬉しいです。
KERAさんは、錦糸町駅によくいらっしゃいます。

撮影も、ブログの記事も許可はいただきました。
気さくで素敵な方ですよね。
minami
2009年04月06日 10:28
神奈川県横須賀市汐入ダイエーまえでkeraさんパフォーマンスしていたのみました!すごかったです!体柔らかいんですね!
わたしこどもです!ウエンディーズ側の黒いのきてた人です!もちろんたっていました!

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