グローバル経済が拡大する格差社会

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日経BPonlineの連載コラム「チャイナプライス」が本になった。『中国貧困絶望工場 「世界の工場」のカラクリ』(アレクサンドラ・ハーニー 日経BP社)。
邦訳のタイトルは鎌田慧の『自動車絶望工場』を思わせるが、この本で彼女の訴えたかったことは中国の現状そのものではなく、その現状を生み出したのが「チャイナプライス」という名の低価格を求める外国資本や取引先であるということだった。
私はこれまで自分なりに中国の現状を見守ってきたが、それは、中国がこの30年間に、日本の近代100年を濃縮しながら、さらにスケールアップした激動を続けてきたからだ。
日本の近代は西欧の近代300年を100年に凝縮しているからこそ、近代の諸問題が日本に凝縮して現れる。公害問題やバブル崩壊が世界に先がけて日本で起こったことは、予言的な意味合いがあった。
そして、中国はこの100年の日本をさらに30年間に濃縮し、スケールアップして経験しているのだ。ここで起きる事件は、日本のこれまでの歩みを戯画化して拡大してきたが、ある時期までくると、そこで起きる事件は、日本と世界の未来を予言するものとなる。
その意味で中国は大変興味深いし、そこで生じている社会矛盾や葛藤は、グローバル経済と独裁国家の出会いという壮絶な実験の結果なのである。

ただ、中国に見出される格差や偽装や環境破壊は、中国共産党の一党独裁のせいではなく、鄧小平が先富論により経済成長を推進してから初めて生じた現象であり、その原因はむしろ、猖獗をきわめるグローバル資本主義にこそ求められる。
というのも、同じ一党独裁のキューバは、鎖国経済と共産主義を組み合わせた結果、貧しいながらも格差も偽装も環境破壊も少ない社会を築いている。そこには現在の中国のように利害関係だけで人を判断するようなぎすぎすした習慣はない。
また、80年代前半の中国は、まだ牧歌的なところがあり、人を騙してまで儲けようという傾向は一般的ではなかったように思う。人々は貧しくてもお互いに助け合い、支えあって生きていこうとしていたし、資本主義に対する警戒感も強く残っていた。
ところがそうした警戒感が、深センを初めとする沿海部の高度成長によって消滅し、規制の少ない中での経済活動が中国全土を覆い、「万人の万人に対する闘争」が始まったのである。

中谷巌は最新作の『資本主義はなぜ自壊したのか』(集英社インターナショナル)でグローバル資本主義と市場原理を「悪魔のシステム」とまで呼んでいる。グローバル資本主義こそが、格差を拡大し、社会のつながりを断ち切り、地球環境を破壊する主犯だと名指ししているのである。
中谷氏はかつて構造改革の急先鋒であった。小渕内閣で経済戦略会議に参加し、規制緩和や市場開放を積極的に主張し、その提言のいくつかが、のちの小泉構造改革にも盛り込まれている。
その中谷氏が転向した。その理由は、「ここまで日本の社会がアメリカの社会を追いかけるように、さまざまな『副作用』や問題を抱えることになるとは、予想ができなかった」(同書22p)ためである。
さまざまな「副作用」や問題とは、具体的には、格差の拡大、福祉の切捨て、地方経済の惨状、食品汚染などである。
なぜ市場原理主義が、このような結果を招くことになったのだろうか。それは市場原理主義がひとつのイデオロギーであり、「競争社会の中では結局すべて自己責任」という苛烈な倫理感に人を追い込み、有無を言わせないところがあるからだと私は思う。
「競争の結果、負け組になった者が貧しくなるのは自己責任」
「就職できないのは本人の努力が足りないためで自己責任」
これが「小さな政府」や「財政規律」などの聞こえのいいスローガンと一体になるとこのようになる。
「自治体が十分な税収を挙げられずに破綻するのは自己責任」
「財政規律が優先するので、後期高齢者が医者に通えなくなっても自己責任」
無駄な道路をたくさん作って赤字国債を発行し続けたツケを、国民に回して地方と福祉を切り捨てたロジックがこれであり、これこそが、自民党が前回参議院選で大敗した理由だった。

ところが、書いていて思い出したのだが、この「自己責任」を一番最初に主張したのは、日本を「普通の国」にすると宣言した、当時自民党の小沢一郎『日本改造計画』(1993)である。その小沢が、今は過去の自民党に先祖帰りしたかのようなバラマキ政策を選挙公約して、参議院選挙に勝った。
新自由主義の自民党にも、先祖帰りの小沢民主党にも、日本の未来は感じられない。といって、ほかにどのような選択肢がありうるのだろうか。

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