鳩山由紀夫の危険な外交政策

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次期総理の鳩山由紀夫は、New York Times や雑誌Voiceへの寄稿の中で、その外交政策を提示しているが、その内容はまだまだよく煮詰められたものとは言いがたい。そのバランス感覚には危ういものを感じる。私は自民党支持者ではないが、彼や小沢一郎の発言通りに外交政策が実行されて行けば、東アジアのパワーバランスには大きなひずみが出てくることを危惧する。

Voiceの記事の要約版がNew York Times の記事になっているので、ここはVoiceの記事を引用しながら考えてみよう。

「アメリカは影響力を低下させていくが、今後2、30年は、その軍事的経済的な実力は世界の第一人者のままだろう。また圧倒的な人口規模を有する中国が、軍事力を拡大しつつ、経済超大国化していくことも不可避の趨勢だ。日本が経済規模で中国に凌駕される日はそう遠くはない。覇権国家でありつづけようと奮闘するアメリカと、覇権国家たらんと企図する中国の狭間で、日本は、いかにして政治的経済的自立を維持し、国益を守っていくのか。」

ここまでの情勢認識には同意する。

「これは、日本のみならず、アジアの中小規模国家が同様に思い悩んでいるところでもある。この地域の安定のためにアメリカの軍事力を有効に機能させたいが、その政治的経済的放恣はなるべく抑制したい、身近な中国の軍事的脅威を減少させながら、その巨大化する経済活動の秩序化を図りたい。これは、この地域の諸国家のほとんど本能的要請であろう。」

注意しなければならないのは、日本は「中小規模国家」ではないということだ。経済規模においては、中国とほぼ同等、しかし一人当たりGDPでははるかに上回る。劣っているのは軍事的側面だけである。

「それは地域的統合を加速させる大きな要因でもある。」

アメリカと中国の狭間で自立を維持し、国益を守ろうとすることが、なぜ中国を含む東アジアでの「地域的統合」に結びつくことになるのか。ここに論理の飛躍がある。

「ヨーロッパと異なり、人口規模も発展段階も政治体制も異なるこの地域に、経済的な統合を実現することは、一朝一夕にできることではない。しかし、日本が先行し、韓国、台湾、香港が続き、ASEANと中国が果たした高度経済成長の延長線上には、やはり地域的な通貨統合、「アジア共通通貨」の実現を目標としておくべきであり、その背景となる東アジア地域での恒久的な安全保障の枠組みを創出する努力を惜しんではならない。」

アジア共通通貨は手段であって目的ではない。目的はあくまでも、アメリカと中国の狭間で最大限に自律性を発揮し、一つの文明としての独自性と影響力を保持することだ。拡大し続ける中国文明圏に組み込まれることでは絶対にない。

やはりというべきか、中国や韓国のマスメディアは比較的好意的なコメントを寄せているが、アメリカの反応はかなり激烈だ。元内閣総理大臣補佐官の岡本行夫氏はこう言う。

「繰り返しアメリカを批判する一方で日本自身が拠(よ)って立ってきた基盤を否定したこの論文は、波紋を広げている。さっそくアメリカの識者が言ってきた。『ハトヤマはチャベス(ベネズエラ大統領。激烈な反米主義者)と全く変わらない』」(産経ニュース「【人界観望楼】鳩山さん、よく考えてください」2009/9/1)

チャベスとはちょっとひどすぎるが、「今度は日本に盧武鉉の亡霊が現れた」くらいには思っているに違いない。
どこが一番カンにさわったのか。冒頭のこの部分だろう。(以下ニューヨークタイムズの記事訳文より)

「戦後、所謂冷戦時代においては、日本は常に、アメリカが主導する市場原理主義(今では「グローバリゼーション」と称するのが一般的だが)に揺すぶられてきた。市場原理主義者達が追及した資本主義社会において、人間は「目的」ではなく、「手段」として扱われた。結果的に人間の尊厳が失われた。」

この見解は、今回の選挙で民主党を支持した国民の過半数が共通して持っている認識を、そのままストレートに述べてしまったものだが、これは「アメリカの市場原理主義は人間の尊厳を奪う」と言っているに等しい。こんなことを対米従属を繰り返してきた日本の首相候補が言うとはまったく想定していなかったため、アメリカの中枢部で怒りと困惑が渦巻いているのだ。

この論文の延長に、民主党の「緊密で対等な日米関係を築く」「日米地位協定の改定を提起し、米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨む」「東アジア共同体の構築をめざし、アジア外交を強化する」というマニフェストがあると気がつくと、アメリカの政権担当者のイライラは頂点に達する。

すなわち、「CIAの最良の作品」であったはずの日本が、初めての本格的な政権交代の結果、少なくとも今後4年間は言うことを聞かない指導者に率いられたよくわからない国になってしまうかもしれないのだ。

それはそれで、ある種痛快なことではあるが、それは韓国人が盧武鉉政権下で反米的になり、ある種痛快な思いをしたのとなんら変わらない。外から見ると、かなり的外れなところにエネルギーを割いてしまうことになりかねない。

小泉政権は反中であることによって、日本の中期的な経済成長を5年間遅れさせてしまったが、鳩山政権は反米である(と思われた)ことによって、韓国が被ったと同様の軍事的な不利益を被ることになるかもしれない。

この方向の偏りを是正できるのは、小沢一郎ではない。小沢は国連原理主義であり、鳩山よりもさらにバランス感覚のない側面がある。期待するのは前原誠司や松原仁だ。首相やその周辺がいたずらに中国重視に踏み込んだとき、こうした人びとがブレーキをかけてもらいたい。そのことを切に願う。

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この記事へのコメント

2009年09月02日 11:42
■鳩山代表に欧米から反発噴出 「東アジア共同体」に「友愛」-評論家的態度は慎むべき
http://yutakarlson.blogspot.com/2009/08/blog-post_31.html
こんにちは。鳩山代表、エコノミストなどに寄稿しましたが、欧米から反発が噴出しています。長い間野党として評論家的なことばかり言ってきたので、日本という国の特殊性をわきまえず、さらにアメリカの長期戦略などあまり理解しないまま寄稿したのだと思います。実質上の一国の元首の国際デビューとしてはお粗末だったと思います。しかし、誰にでも失敗はあるものですから、これから、鳩山さんも民主党の人たちもきちんと勉強して、二の轍を踏まないようにしていただきたいと思います。なんといっても、日本の国家元首と、与党なのですから、日本の恥になるようなことだけは避けてほしいものです。詳細は是非私のブログをご覧になってください。

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