北朝鮮という生き地獄~エコノミスト記事より~

英国エコノミスト誌が北朝鮮についてのコラムを載せているので、試しにざっくりと翻訳してみた。日本では知られていることも多いけれど、改めて整理されてみると、もはや末期を通り越しているように思える。

この世の地獄 Oct 22nd 2009 by Banyan
From The Economist print edition

西側諸国は、この世界で最も野蛮で組織的な人権侵害に対しいまだ見てみぬふりをしている

「北朝鮮の国外で北朝鮮をネタに生計を立てている取り巻きのシンクタンク,学者,論客,政策立案者が拡がっている。 彼らは北朝鮮の核に関する野望と6カ国協議の展望に関して話題にするが、6カ国協議は、資金援助と安全保障で北朝鮮が核兵器開発をあきらめるように誘導することを意味する。取り巻きが生計を立てるにはもっと何かが必要になるが、北朝鮮がこの春、6カ国協議は死んだと宣言してから、情報の露出は貧弱になってしまった。
それで最近北が米国と相談した後、6カ国協議にまた戻るかも知れないと助け舟を出した。 今週核交渉を担当した北朝鮮高位官僚が米国を訪問した。 また会議は踊り始め、取り巻きは何がでてくるかと意見に花を咲かせることになる。

しかし核について焦点を当てすぎると、北朝鮮について他の注目すべき点を見逃すことになる。たとえば人権だ。ここ数年、日常生活のおよその状態や、かの国の悲惨な部分が明らかになった。まず最初に、中国に逃げてきた脱北者が語るところによれば、1995-98年の間に、北朝鮮では60万~100万の住民が飢えて死んでいるという恐るべき事実がある。韓国に定着した脱北者たちや、支援活動家、外交官、衛星写真などから、より詳細な北朝鮮の実態が知られるようになった。その中でも恐ろしいのは、北朝鮮の強制収容所だ。

長く見なければ記憶も消える。しかし、最近の写真を見ると、全くひどい。特に、小さな町や土地がやせている北部地域に住んでいる庶民がそうである。韓国の北朝鮮への衣料支援雑誌『良き隣人』に掲載された北朝鮮の庶民の日常生活を見てみよう。この記事は、検証はできないが、信じるに足りる内容だ。元山市付近では、住民の70%が草をまぜたコーンスープだけで生き延びている。江原道の山岳地帯の住民は、『苦難の行軍(すなわち飢餓)』以来、翌春に最も深刻な食糧難が迫って来るのを心配している。北朝鮮が2012年までに社会主義の生産力を高め、『強盛大国』になると『150日の戦い』のキャンペーンを行ったことが混乱を招いた。このキャンペーンが農家の計画を台無しにしたのだ。『このままではみんな死ぬしかない』とある農家は言う。

平安南道では、住民が食糧泥棒を防ぐためにパトロールを組織している。ある住民はトウモロコシを盗もうとする3人の兵士に立ち向かった。警官が到着すると、兵士たちは警官にも攻撃した。咸鏡南道では、燃料が不足して重機を操作できなくなったので、住民たちが素手で巨大な岩を動かさなければならない。平安南道では、家庭の主婦たちに、ダム工事の労働者に必要な手袋を作らせ、軍隊に肉を送らせ、鉄屑を集めるよう指示が出て、不満が出ている。清津市では、過去16カ月間、550人の工事現場の労働者たちに食べ物を支給することができなかった。欠勤率は3分の1に達している。"労働拡大運動"では、10人の警官が労働者の出勤を強制している。

専門家はまた飢餓が起きるとは予言していない。しかし、多数の住民が苦しんでいる。国家配給制が完全に崩壊状態で、住民は、闇市場と物々交換でなんとか飢餓をしのいでいる。闇市場が北朝鮮が必要とするカロリーの半分を供給し、家計の収入の5分の4をもたらしている。

この闇市場は、国の失敗を補っている。しかし、2005年以降、政権はこのような闇市場を取り締まっている。今月のハワイの東西文化センターでは、ステファン・ハガードとマーカス・ノーランドは、画期的な北朝鮮の調査報告書を発表した。この報告書は刑罰のシステムが闇市場で中心的な役割を果たしていることを強調している。北朝鮮では今、闇市での活動やちょっとした盗み、それに食料を探して国内をさまよったりすることまで、犯罪として強制収容所に送り込んでいる。2年以下の懲役刑を受けた囚人の新しい収容所は、もっと長期の収容所の組織と連結されつつある。最も悪名高いのは、政治犯の強制収容所だ。北朝鮮は、国民を、独裁者金正日に対する忠誠心に応じてランク付けしているが、北朝鮮の国民の半分程度が"揺れ動く層"に属している。
政治犯は約15万人ないし20万人が5箇所の巨大な収容所に投獄されている(家族全員が反革命分子とみなされた者も含める)。多くの人は、生きて帰ってくることはないだろう。

とりわけ、最低レベルの収容所の元受刑者は、長期の強制収容所よりもさらに残酷ですべてを剥奪された状態にあると証言している。調査を受けた人の誰もが強制的な餓死を目撃している。4分の3が処刑を目撃しており、囚人たちの半分以上が、拷問や殴打による死を目撃している。逮捕と判決は、恣意的なものだ。こうした仕組みは政権の維持に役立っている。ハガードとノーランドの報告によると、こうした逮捕拘禁のシステムはたかりの手段として悪用されているようだ。闇市場で商売している住民たちも、放っておいてもらうために賄賂を差し出すという。北朝鮮では、核武装という頂上から闇市場という底辺まで、国が、巨大な規模でたかりを行っているのだ。

北朝鮮を教化するには

いくつかの点で西側諸国は、このような虐待をもっと早く赤裸々に直視しなかったことについて恥を知る必要がある。バラク・オバマ大統領は、北朝鮮人権特使を任命するために延々 8ヶ月かかり、北朝鮮に適切なメッセージを送ることができなかった。北朝鮮に私達がどのように対応すべきかという問題はそのまま残っている。北朝鮮の政権交代には見込みがない。その上、隣国である北朝鮮に最も大きな影響力を行使することができる中国は、北朝鮮の非核化より、北朝鮮政権の安定を重要に考えている。韓国政府も統一を望んでいることを公式には言うが、韓国の市民の大多数は、北朝鮮を別の国というより、別の惑星のように見ており、別の軌道上に放っておくのが一番いいと考えている。

旧ソ連を転覆する方法を、北朝鮮にも適用することができる。官製の真実ではなく、もうひとつの真実を提供するラジオ放送にもっと費用をかけることができる。金正日政権への忠誠も、ちょっとした方法で掘り崩すことができる。たとえば政治局員への様々な提供や、海外でのエリート教育など。しかし、冷厳な現実として、核ダンスがアメリカ首脳の心を奪っており、北朝鮮の政権が自国民に与えた恐怖について、遅ればせでもきちんと推し量ることを阻んでしまっている。」

兵士には食料が行き渡っていると聞いていたが、平安南道の例を聞くと、兵士もかなり追い詰められている。
飢餓状態はいっとき克服されたのかと思っていたけれど、またぞろこのような事態になっているとは。
飢えて国内をさまようだけで強制収容所に入れられて、公開処刑を見せられたり、無理やり餓死させられる人を見ることになるとは。そしていつ自分の番が来てもおかしくないとなると、普通の精神状態ではいられない。

最近、蓮池薫氏の『半島へ、再び』(新潮社)を読んだが、こうした背景の深刻さが理解できないと、半島にいた頃、氏の精神がどのくらい束縛されていたのか、それに対比した自由がいかに貴重なものか、わからなくなる。

エコノミスト誌の記事には以下のようなコメントが寄せられている。

「中国は北朝鮮の試練に大きな責任がある。」

「この話題で一番不可解なのは、北朝鮮の苦しみに対する韓国人の無関心だ。」

これは真っ当な意見だ。

「筆者が提案する弱腰の方策では、何も達成できない。アメリカができる唯一のことは、爆撃するか、侵攻するかだ。しかし、一アメリカ人として、韓国でこれ以上アメリカ人の命を浪費する意味がわからない。 …エコノミスト誌がこれはアメリカの問題だと決めつけているのでびっくりした。これは、東アジアの問題で、アメリカの政策の失敗ではない。」

東アジアの問題は東アジアに任せろという点については同意する。それ以外は物騒な主張にしか聞こえないが。

「北朝鮮が侵略されてはならない真っ当な理由がある。
1.中国。中国は、北朝鮮の存続の保証人であり、どんな国でも(アメリカでさえ)、中国人に大きな戦争をふっかけるほど無鉄砲であってはならない。
2.韓国。優れた経済力と超一流の米国の兵器への接近のおかげで、韓国の軍事力は、北の軍事的脅威を小さくしている。しかし、…そのような優勢が総力戦による人的経済的な損失を少なくする助けにはならない。数百万人が死ぬかもしれない。韓国の経済と、おそらく極東の経済全体が、深刻に害されるかもしれない。
3.北朝鮮。北朝鮮は、ここ2、3年、より良い生活水準の追求を、ゆっくりとやってきた。資本主義が広がってきた。北朝鮮の重要な少数派が中国と韓国でクールな産品に触れることは、もはや秘密ではない。彼らのほとんどは韓国の富や、文化的な産品の魅力にさらされている。北朝鮮初のハンバーガーショップは、ちょうど2、3ヵ月前、平壌で開店した。50,000台の携帯電話が、すでに北朝鮮で使用中だ。そして、オランダ人のジャーナリストは、2012年までに、中流階層が北朝鮮で出てくると予測している。」

これに対する反論として、別の投稿者は北への攻撃を主張する。「死傷率は怖ろしい数字になるだろうし、経済は一時的に損なわれるけれども、東アジアの経済成長と2000万人の自由なコリアンが生まれる。それは血で贖われる価値がある。」

英語圏だと、"Give me liverty, or give me death."風の、わりと好戦的なコメントが多くつくんだなと実感する。

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