増え続ける中国人移民とそれを嫌うロシア人

“ロシア全体の面積の36%を占める極東地方から、ロシア人たちが離れていっている。現在、この地域の人口は650万人で、ロシア全体(1億 4200万人)の4.58%だ。1991年には799万5000人だったことから、この15年間の減少数は韓国の忠清北道(約150万人)に匹敵することになる。国連の人口報告書では、「ロシア極東地方の人口は2025年には470万人にまで減少する」と警告している。また、ウラジーミル・プーチン大統領も昨年12月の安全保障会議の席上で「極東地方の人口減少のような慢性的な問題が、ロシアの安全保障にとって実質的な脅威になっている」と述べた。
ロシア人が極東地方から離れていく最大の理由は、モスクワと比べて格段に低い所得だ。モスクワ市民の1人当たりの平均月給は1040ドル(約12 万3000円)だが、ブラゴヴェシチェンスク市民のそれは300ドル(約3万6000円)に過ぎない。ブラゴヴェシチェンスク市内のレーニン通りで小さな雑貨店を営むビチェスラフさんは「今でもモスクワから遠く離れた“陸の孤島”のようなところだが、おそらく100年後には“無人島”になってしまうのではないか」と話す。”
ブラゴヴェシチェンスク(ロシア)=権景福(クォン・ギョンボク)特派員 2007/4/22 朝鮮日報/朝鮮日報JNS

対して、中国東北地域の人口は1億3000万人もいる。
「ロシアに滞在している中国人は1989年に数千人だったが、2002年には326万人に増えた」とも言われている(サーチナ 2007/2/14
次の写真はハバロフスクのダーリナバンク銀行。漢字が目立つ。(産経新聞 佐々木正明記者ブログより)
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2006年8月のTBSニュースコラム「ユーラシア新世紀」には次のような記事が載っていた。 
ロシアの公式統計では、ロシア在住の中国人は45万人。しかし、実際には200万人以上に上り、500万人という非公式推定もある。
 中国人労働者や行商人らはロシアの国境検問所で、腐敗した係官に袖の下を渡し、難なく国境を越えているのだ。
 ロシアの新聞は2010年までにロシア在住中国人は800万から1000万人に達し、民族別ではやがてロシア人に次ぐ第二の民族になると書いていた。
 プーチン大統領は数年前、極東を視察した際、「やがて極東・シベリアでは中国語が主要言語になるだろう」 とジョークを飛ばしたが、ロシア指導部には中ロ同盟や中国との関係強化に伴う陥穽への危機感が希薄だ。 ”

その前段にもっと具体的な描写がある。

“ロシアの民芸品が並ぶモスクワ東部の観光名所、イズマイロボのそばに巨大な中国人市場が数年前から出現し、年々規模を拡大している。中国製の衣類や靴、日用品を安価で売り、収入の少ないロシア人の間で人気だ。
 そこでは甲高い中国語が飛び交い、ベトナム人商人の姿も目立つ。
 中央アジア系労働者を使用人に使い、ざっと1平方キロ近くがロシアの領土とは思えない「中国人租界」となっている。
 日本にいる中国人の多くは日本語を話すが、彼らはほとんどロシア語を解さない。 中国東北部や南部など農村地帯の行商人が多い印象だ。
 実はこうした中国人街がロシア各地に次々誕生しつつある。 労働力不足の極東やシベリアでは、中国人の季節労働者が農場や工場で働いており、中国との通商や労働者抜きには経済が成立しない状況になりつつある。
 中国人の不法滞在、密輸、犯罪も増加し、極東で発生する中国人の犯罪件数は年間1万件に上る。
 シベリアに生息するアムールトラ、ジャコウジカといった絶滅危惧種が中国人密猟者たちの標的になっている。
”(同上 ユーラシア新世紀)

ロシア語を解さず、不法滞在や密輸、犯罪、密猟が続けば、ロシア人は中国人に好感を抱くはずもない。

“中国の「侵略的拡張」に対する危機感は極東で最も強く、政治家や識者もこの問題を発言するようになった。
  イシャエフ・ハバロフスク地方知事は「中国の極東への拡張により、10-15年内に中ロ両国は政治・経済両面で対決コースに直面する」と発言。プーチン政権が進める中ロ蜜月路線に警鐘を鳴らした。知事は、日中両国が競合する、東シベリアからの石油パイプライン構想でも、中国だけに売らず、売却先を多角化するよう求めた。
  評論家のアンドレイ・ピオントコフスキー氏は、「ロシアの人口減が続けば、ロシア領に浸透する中国人は次第にロシア人をこの地域から追い出すようになる。極東シベリアは中国の影響圏に入り、やがて中国が保有して中国領となる」と警告した。
  中国専門家のワシリエフ高等経済研究所研究部長は「日本との関係強化は無害だが、中国との関係には毒があり、慎重に進めるべきだ」と述べた。”(同上)

産経新聞の佐々木正明記者はブログでこんなことを書いている。

私があったロシア人は、口々にこういいました。
「私たちは人口が減っていき、将来は中国人にのっとられるのさ」

 事実、こうした現象も起こっています。
 羽振りの良い中国人商人は、中国では認められないロシア人娼婦をロシア側で買うのです。
 その結果、出てきたのが中露のハーフ。アムール川沿岸にはいま、中露のハーフの子どもたちが増えているのです。
 中国経済の鎖にどっぷりととらえられてしまったロシア極東。国境を越えてまで勢力範囲を膨張させる中国に対する警戒感は強いのです。”(2007/04/27

モスクワで中国人商人が集まっていたチェルキゾフスキー市場は、2009年10月26日に、何者かに放火されて炎上した。ロシアの法的機関関係者はロシア国内のメディアに対し、この火災について「悪意による放火の可能性がある」と漏らしているという。(レコードチャイナ 2009/10/28

同様の事件は3年前にもあった。

モスクワの市場爆発事件 アジア人排斥が目的 (産経新聞 2006/8/23)
【モスクワ=内藤泰朗】
“モスクワ東部のチェルキゾフ市場で爆発物により多数の死傷者が出た事件で、爆破犯がロシアで増大する中国人などアジア人排斥を目的に、自家製の爆発物で犯行に及んでいた事がこのほど明らかになった。ロシアの日刊紙ガゼータなどが報じた。
 モスクワの捜査当局は23日までに、同市内の大学で化学を学ぶ20歳のロシア人男子学生2人を殺人容疑で逮捕。家宅捜査の結果、大学寮から重さ8キロの自家製爆弾と、ナチズムを称賛した書籍やバッチなどを押収した。
 21日の爆弾事件では、10人が死亡、45人が負傷したが、死者のうち5人は中国人で、1人がベトナム人だった。逮捕された2人は、捜査当局に犯行を認め、動機については同市場に「あまりにも多くのアジア人たちがいたからだ」と証言した。犯行の数日前から爆弾を組み立てて、同市場のどこで爆弾を爆破させるか、下見を行い爆破計画を練っていたという。
 当局は22日、さらに2人の協力者とみられる18歳の男子学生を逮捕、5人の重要参考人からも事情聴取している。
 ロシアでは、中国との経済関係拡大に伴い、中国人が大量に流入するのを警戒する声が高まっているほか、かつての「弟分」が経済的にロシアより強くなることへのいらだち、中国人への「黄禍論」も出てきている。
 親プーチン政権派日刊紙イズベスチヤが23日報じたインターネット世論調査の結果でも、「ロシアの敵は何か」との質問に、6%が「中国人の増殖力」と回答した。 ”

チェルキゾフスキー市場は2009年6月にすでに市場閉鎖となっていたが、その他の卸売市場も、当局の方針で2009年9月29日、経営禁止になった。モスクワ在住の中国人商人のうち、約85%は卸売市場に店舗を構えている。それだけに今回の禁止令が与える影響は甚大なものだという。(中国人商人を狙い撃ち?=モスクワ市内の卸売市場が経営禁止に―ロシア 2009/10/1 レコードチャイナ)

最近の意識調査ではこのような結果が出ている。

<調査>増え続ける中国人移民、半数が「嫌悪感」―ロシア
“2009年11月13日、ロシアで行われた移民に対する意識調査の結果、半数が大量に押し寄せる中国人移民に嫌悪感を抱いていることが分かった。 14日付で青年参考が伝えた。
アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席したメドヴェージェフ大統領は14日、中国の胡錦濤(フー・ジンタオ)国家主席との会談で「我々の関係は今まさに、さらに上の階段に上がろうとしている」と述べ、両国の友好関係をアピールした。ところが、ロシア科学院が08年から09年にかけて実施した調査結果によると、回答者の50%が中国人移民に嫌悪感を抱き、「中国人はいらない」とまで言っている。
官民でかなりの温度差があることが明らかになった。
ロシアでは極東地域を中心に中国人の大量移住が社会問題となっており、中国人を狙った暴行事件や抗議デモも起きている。”(レコードチャイナ 2009/11/19

『移民と国家―極東ロシアにおける中国人、朝鮮人、日本人移民』(イゴリ・R. サヴェリエフ 2005 御茶ノ水書房)によれば、ロシア帝国の時代にはウラジオストクの総人口の3~4割を中国人が占めていて、ロシア極東の総人口100万人のうち中国人と朝鮮人が約15%を占めていたという。当時の日本人は少数だが都市部で日本人街を形成していたともいう。

自然に任せていれば、ロシア極東は100年前の状態に戻るかもしれないのだ。
そこでロシアでは、アジアのどの国と手を結ぶのが一番いいかを模索することになる。
その中で、日本と手を結ぶべきだと考える市民団体が出てくるのも不思議ではない。
ハバロフスクでは北方四島返還運動に取り組むロシア人の団体がある。

●正しい歴史広めたい ロの返還運動代表が講演 根室 北海道新聞  2006/12/13
“【根室】ロシア・ハバロフスク州で日本への北方四島返還運動に取り組むロシア人の団体「再生二十一世紀」のアレクサンドル・チェチューリン代表が十二日、根室市内で講演し、ロシアで正しい歴史認識を広める必要性を強調した。再生二十一世紀は同州の教員、会社員ら百人ほどで構成。学校訪問やインターネットによる領土問題啓発に取り組んでいるという。同代表が貿易の仕事で来道したのに合わせ、上川管内東川町の市民団体が九日の旭川市に続き、根室市での講演会を主催した。”

ウラジオストクでも中古車販売業者が日の丸をロシア国旗と一緒に振っていたが、ここでも似たような事態が生じている。ロシアには強いことを自認する鳩山首相は、こうした背景をもとに、ロシア極東を日本の影響下に取り込んでおくことを、戦略的にぜひとも実行していくべきだろう。


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