産業空洞化と日本の衰退

このところ日本人は視野狭窄に陥り、時代認識を誤りつつある。
80年代の後半、日本のメーカーと金融機関は世界最強で、並ぶものがない様相を呈していた。
バブル崩壊で、金融機関はすっかり脆弱になったが、その結果、原点回帰というべきか、製造業の重視が叫ばれた。そこでは家電と自動車については世界最強、という確信だけは揺るぎなかった。
ところがこのところ、日本の家電メーカーは、すべてサムスン電子の後塵を拝している。
技術力では負けないかもしれないが、売上高、経常利益、マーケティング力、販売力の全てにおいて下回っていて、経常利益では日本の全部の家電メーカーを足しても、サムスン一社に及ばないと言われている。
自動車にしても、トヨタはプリウスこそ売れているが、世界中どの地域でも減収減益に見舞われていて、アジアの成長から果実を得ることができないでいる。それに対して現代自動車は比較的痛手を受けずに、この1年間を過ごしてきた。日本からは撤退せざるをえなかったかもしれないが、アジア市場ではその低価格戦略により確固たる地位を築いている。
韓国のノムヒョン政権は、発言がぶれまくり後半は人気もなかったが、FTAを各国と締結して、日本に比べ貿易上有利な地位を築いた。イミョンバク政権もそれを引き継いで、EUとのFTAを今年7月に妥結させた。そのことに危機感を持っている日本の政治家は少ないが、メーカーの危機感は相当のものだ。
韓国のメーカーは国内市場が狭いせいで、初めから世界を相手に商売をするしかないという覚悟があった。
日本のメーカーは、相対的に広い国内市場を相手にしたせいで、世界を相手に商品開発するという意識が乏しかったといわざるをえない。

このままでは、家電も自動車も、携帯電話の二の舞になり、ガラパゴス化して、世界市場から退場する羽目になってしまう。それだけではない。円高と高い法人税、強い排出ガス規制の三重苦で、外国に工場を移転することが最も合理的な選択として定着しつつある。産業の空洞化は避けられない。
ほんの少し前まで、産業を空洞化させて金融に特化していった英米型資本主義は誤りだという総括がされることが多かったが、日本の場合は否応なしに産業が空洞化しようとしているのに、それに対する対策は打たれず、製造業に代わる第三次産業を今後の成長戦略の核とするだけの覚悟も見当たらない。

産業を空洞化させるのが誤りなら、政策的に死に物狂いで円高を回避したり、OECD諸国の中で一番高い法人税率を下げたり、人件費を抑制するために積極的に外国人労働者を導入するというような政策を実現しなければならないが、そのような立案がされた形跡はない。

といって、金融政策の緩和や、情報通信産業や環境産業の育成に徹底的に注力するような政策がとられているわけでもない。至って中途半端。農業のような第一次産業を保護してFTAの締結を遅らせ、結果として第二次産業を衰退させ、第三次産業を育成することもできないでいる。

最近、中国社会科学院が「国際形勢黄皮書(白書)」を発表し、世界11カ国(欧米7カ国とBRICs-ブラジル・インド・中国・ロシア4カ国)の総合国力についての分析と評価を行っている。これら11カ国の総合国力ランキングは、順に、米国、日本、ドイツ、カナダ、フランス、ロシア、中国、英国、インド、イタリア、ブラジル。
中国が前年6位としていた日本を改めて2位と評価し、自国を7位と評価しているところに冷静さが伺える。

今年8月に韓国で発表された、韓半島先進化財団による国力評価では、アメリカ、中国、日本、英国、ドイツ、フランス、カナダ、オーストラリア、イタリア、スペインの順で、韓国は13位。

ここでも冷静な自己評価は、将来への向上心の賜物である。

日本はかつて持っていた「経済大国になる」という国家目標を達成することで、目標自体を見失ってから、若者にも目標や使命感がなくなってしまった。このままいくと、ずるずると衰退への道を歩むことになる。もう一度、冷静な自己評価を基にした新たな国家目標を立てていく必要があるのではないだろうか。

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