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zoom RSS 進撃の巨人と旧ユーゴの兵士たち

<<   作成日時 : 2013/08/18 22:54   >>

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『進撃の巨人』。アニメの放映を機に、日本だけでなく、外国でも人気に火がついている。
重苦しいストーリー。身近な人間が巨人に食われてしまうという衝撃的な展開。
そして、生死を共にした兵士達の絆と裏切り。深まる謎。
真相があいまいなまま次々と展開していく現実に振り回される登場人物。
主人公の強い決意。弱さゆえに伝わるリアルな苦悩。

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マンガよりもアニメのほうが完成度が高い、珍しい例だが、アニメは韓国でも同時放映されて、日本以上に社会現象になっているという報道もされている。

なぜこのマンガは世界中で共感されるのだろうか? 

これに類する過酷な体験を経た視聴者は、世界中でも一部を除いて、ほとんどいないであろうにもかかわらず。

それは、見る者が共通して、外の世界を残酷なものとして感知しているからだ。

外の世界では、グローバリズムが席巻している。

外の世界の競争は苛烈だが、秩序は十分ではなく、弱者には容赦のない残酷な結果を招く。
競争は効率とコストの低減を招き、市場に参加する多くの人々に、その面に限って福音をもたらすが、
競争は均一化を招き、一握りの勝者と多数の敗者を産み、弱者を容赦なく淘汰する。

そして、避けがたい無秩序が、権力者へのアクセスや貴重な情報を独占する悪意の参加者を有利にする。

このマンガが韓国で人気が出るのもわかる気がする。
日本以上にグローバリズムの荒波にさらされながらも、壁の外=世界市場に打って出なければならない状況にある。国内市場がぜい弱である以上、この状況は変わらない。

しかし私は、このマンガを見ていると、日本よりも、韓国よりも、はるかに過酷な状況を実際に体験したであろう人々のことを想起してしまう。

それは、旧ユーゴ圏の人々だ。
1991年にクロアチアは旧ユーゴスラヴィアから独立したが、クロアチア人は1995年まで、国内外のセルビア人との間で、血で血を洗う戦いを繰り広げていた。
昨日まで同じ国民として、友として、平和裏に共存していた人々が、別々の国に分かれた途端、憎悪をぶつけ合って殺し合いを始めたのだ。

1993年の第1回K−1グランプリ王者になった、ブランコ・シカティック。
彼の眼には、日本ではあまり見たことのない凄惨な光が宿っていた。
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国際的にはまったく無名だったが、軍隊で教官をしていたところを声をかけられ、K-1のリングに上がったという。
そしていきなり優勝し、「石の拳」と怖れられた。

そして翌年この試合で引退した。試合が終わった後、彼は見違えるような表情でこう語っている。
「この試合はクロアチアの子供達に、そして自由と平和の為に闘う人達のために闘った」。
そして教官として、再び戦場に戻っていった。
彼は戦場を生き延びて、母国で実業家として成功している。

また、その弟子にあたるミルコ・クロコップは、クロアチアの警察官だったが、こんなことを言っている。
「ガンファイトも、ナイフファイトもオレは経験した。目の前で親しい友人が死んでいく姿も見た。今でもたまらない思いが込み上げる。 だから、レフェリーに見守られ、ルールがあるリングの中のファイトに、オレがびびったりするはずがないよ」

日本代表監督だったボスニア・ヘルツェゴビナ出身のイビチャ・オシムはミルコについてこんなことを言っている。

「ミルコ・クロコップは日本でビッグスターだが、彼が専念しているのはカルト的なスポーツの一つだ。
激しい剣闘のようで、生きるか死ぬかの闘いのようだよ。
見ることは容易いことではないが、クロコップは一度素晴らしいことを言っていたね。
"見ることが出来ない者は、見る必要はない"、とね。
私は完全にミルコに同意するよ。私もこう問う。
"私達全員は毎日、存在を賭けた闘いに立ち向かっていないのではないのかね?"」

毎日、存在を賭けた闘いに立ち向かうこと。それは何か?

オシムが「ドーハの悲劇」についてコメントを求められて、残した言葉。

「悲劇? ワールドカップ予選で負けて、誰か死んだのか? 悲劇という言葉を軽々しく使うべきではない」

私達もよく知る「ピクシー」ドラガン・ストイコビッチは、1999年 10月、サッカーのユーゴ代表として、ヨーロッパ選手権予選の最終戦を戦うために、宿敵クロアチアのホームに乗り込んだ。

勝ったほうが、本大会出場を決める。旧ユーゴ代表チームでは同僚だったのに、二つの国に分かれ、つい4年前まで実際に殺し合いをしていた国同士。「殺せ!殺せ!殺せ!!!」という、殺意に満ちた怒号が轟く完全アウェーの中で引き分けに持ち込み、本大会への切符を手に入れている。

私達が呑気に生きてきた同じ時代の、同じ世界で、「妖精」の直面していた恐るべき現実を、知ることができる。

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